はじめに
こんにちは。
ぼくはこのブログで、アイドルマスター シンデレラガールズ(以下デレマス)で開催されたボイスアイドルオーディション(以下VA)について、有志によるツイッター集計(以下ツイ集計)を分析し、投票終了後、正式な結果発表前の段階で、結果予想も含めた記事を書きました。
multikuneru.hatenablog.comこの記事では、正式な結果が発表された今、その事前分析がどの程度的を射ていたのか、反省を行います。前記事で自分が定義した用語や数式などを、この記事でも用います。そのため、この記事は上記記事を事前に読んでいることが前提になりますのでご注意ください。
前回の記事でも述べましたが、ツイ集計を見たくない人、ツイ集計に関する話題を読みたくない人は、すぐにこの記事を読むのを中断し、戻っていただくようお願いします。ここから先、ツイ集計データのリンク先やそこから引っ張ったデータを示しています(1位から最下位まで集計されています)ので、くれぐれもご注意ください。
予想と結果
まず、分析の基礎として用いたツイ集計サイトはこちらです。
cg-db.tkそこに提示されていたさまざまなデータをいじくり回して、「わかりません!」と言いつつも、自分なりにVAを、以下のように結果予想しました。
ボイスを獲得する上位3名に名乗りを上げるのは、浅利七海さんが最も濃厚、辻野あかりさんもある程度有力と感じていて、残る1枠を、砂塚あきらさん、八神マキノさん、今井加奈さんで争い、工藤忍さんも波乱(ツイ集計と比べて)を起こして入る可能性ありと予感しています。
VAの正式結果は、以下の通りです。
- 辻野あかり 22,139,341票
- 砂塚あきら 21,226,585票
- 桐生つかさ 13,486,437票
所感
いやあ、 大外れでしたね!自分の目のフシアナっぷりに、ただ恥じ入るばかりです。
ツイ集計の順位と正式結果が全く異なったのであれば、まだ「ツイ集計を基礎に結果を予想するのは無謀だった。終わり!」で済む話ですが、なまじ近いだけに、自分の予想力のなさを思い知らされた気分です。
予想に挙げたり挙げなかったりした個別のアイドルについて、振り返ります。
浅利七海さんは、ツイ集計のアカウント数で2位であり、ぼくが予想の基礎にした前記事の図1、図2、図3で中央近くに位置していました。ぼくはそれを、ライトユーザーにもヘビーユーザーにも支持され、固定票も、声ありアイドルからの支援も、ユニット仲間からの応援票も、課金票も無課金票も、満遍なく得ている、と解釈しました。今回のVAは、無課金票を投じる人数が物を言う選挙になるのか、課金力が物を言うのか、基礎票とユニット応援票のどちらが物を言うのか、分かりませんでしたが、どちらに転んでも、図にプロットされた位置が極端なアイドルが先に順位を落とし、七海さんは残るだろうというのが自分の想像でした。意外な結果です。
桐生つかささんは、ツイート集計のアカウント数で4位でした。それでも予想の候補から外した理由は、何だったのか。前記事・図3(この記事の下の方にも載せています)で、つかささんは八神マキノさんより下に位置し、前記事・表3における o = Only Account の数でマキノさんはつかささんを上回っていました。そのため、熱心なプロデューサーたちや、ディープな課金層が勝敗を分ける場合、あきらさんが落ちるかわりに上がってくるのはマキノさんだという読みでした。ここも、読みが足りませんでした。
砂塚あきらさんは辻野あかりさんと似た特性を持っており、支持層はライトユーザー主体、人数で勝負する陣営、と分析していました。あきらさんに投票ツイートしたアカウント数 c = 4821 で、辻野あかりさんは c = 5761 ですから、最終得票もそれにほぼ比例し、あきらさんはあかりさんの8割程度かそれ以下になると見込んでいました。あかりさんはたべるんごのうたブームという目に見える要素がありましたが、あきらさんは今回に限ってはそこまでの熱量を見いだせなかったのもあります。ですが実際には、あきらさんはあかりさんの約96%の票を得ています。
x = 島村卯月の得票数
b = 島村卯月に投票した人の、平均投票数
c = 「島村卯月に投票したよ!」ツイートをした人数
p = 島村卯月に投票した人のうち、ツイートをした人の割合
x = b × c ÷ p
e = x ÷ c = b ÷ p
前の記事で使った値(eはこの記事が初出)で、eの値を比較します。
このe (=b÷p) の値において、あきらさんがあかりさんを上回ったのは、予想外でした。
また、今までのシンデレラガール総選挙では、前回の総選挙で順位発表圏内に入ったアイドルの中からボイス実装・CDデビューするアイドルが選ばれることが多かったです。しかし、今回のVAでは、前回の総選挙で圏外だった三人が、圏内だった7人を上回ってボイスを勝ち取りました。少なくとも今回については、前例の通用しない選挙だったと思います。その点でも読みを外したと感じました。
ツイ集計を再び分析
正式結果を受けて、再び分析を試みます。
辻野あかりさん、砂塚あきらさんの二人は、3位以下のアイドルに1.5倍以上の差をつけた圧勝でした。
あかりさん、あきらさんの二人は、cの値(VAアカウント数)において3位以内につけていましたが、ライトユーザーが多いと推定したため、課金度合いなども含め、bの値(平均投票数)に不安があり、必ずしも勝ち確とはみなしていませんでした。ですが実際には、あきらさんは e の値で、つかささん、七海さん、マキノさんらを上回り、あかりさんも彼女らに負けていませんでした。
二人に投じられた票のうち課金票(総選挙応援セット)がどれだけあるか分かりませんが、ユーザー一人あたり約900票の無課金票による数の力でその影響力を減殺したのかもしれません。
もう一つ考えられるのは、あかりさん、あきらさんへ投票した層は、ライトユーザーが多いゆえに、投票してもツイートまではしない人の割合が大きく、p の値が他アイドルより小さかったことが、e の値を、ひいては x の値を押し上げたという可能性です。
桐生つかささんは、c の値で七海さんを下回り、マキノさんに近かったですが、VAを勝ち上がり、3位に名乗りを上げました。
この要因は何でしょう。一つ、気づいたことがあります。
前の記事で使った図3を、再び掲載します。VA当選者を赤いドットにしています。
ここで注目したいのは、横軸です。例えば最も左の砂塚あきらさんは4.9%に位置しますが、これは、VAであきらさんに投票ツイートしたアカウントのうち4.9%が、総選挙でもあきらさんに投票ツイートしたということを示します。
この図3について、前回記事でこのように書きました。
図3で右に位置するアイドルは総選挙もVAも頑張る。左に位置するアイドルはVAに注力するという傾向だと思いますが、どちらがより良い結果を得るかは、自分には分かりません。正式結果が出たらそれと照らし合わせたいと思います。
つかささんは図3において、七海さん、マキノさんより左に位置し、かつ、VAを勝ち上がったというのが、いま見える結果となります。
もう一つ見える事実は…。
第9回シンデレラガール総選挙 結果
- 35位 辻野あかり
- 44位 工藤忍
- 50位 浅利七海
総選挙でランクインしているのは、c の値で2位、かつ図3であかり・あきら・つかさの三者より右に位置する浅利七海さん、c の値で13位、図3で右端近くに位置する工藤忍さん。そして、辻野あかりさんです。
因果関係があると、安直に断定はできません。ですが、一つの仮説として、総選挙におけるそのアイドルへの投票率が低い(図3で左に位置する)ほうが、今回のVAでは、有利に働いたという推論が、その逆よりは説得力を持つ結果となった感があります。
辻野あかりさんは、たべるんごのうたブームに乗り、新規参入したライトユーザー、声なしアイドルに担当を持たないユーザーに大きな支持を広げ、総選挙とVAの両方で得票を伸ばし、人数にもとづくパワーで、VAの勝者となった。
桐生つかささんは、手持ちの総選挙票を声ありアイドルとの票交換に活用するか、もしくは他の方法で、VAに注力する姿勢を見せたことが、VAに勝ち残る一因となった。
砂塚あきらさんは、辻野あかりさんと一緒に声を得たいと思うプロデューサーを味方につけた数の力と、VAに注力する姿勢という、上記二つの要素を兼ね備えて、声を勝ち取った。
この図から無理やりこじつけるなら、そういう読み方となる気がします。
ツイ集計以外の大切さ
ここまではあえて、前回の記事で根拠としたツイ集計の図を主軸に推論をしました。
ですが、ぼくが結果を受けて感じたのは、ツイ集計以外の情報、数字以外の情報の大切さです。
ツイ集計では、各ユーザーが各アイドルに対し平均何票投票しているか(dの値)、各アイドルに対しツイートを伴わずに投票する層がどれだけいるか(pの値)は直接見えません。今回は、ツイ集計サイトから取れるデータだけをもとにそれらを見極めることを試みましたが、そこに限界を感じました。
選挙結果を予測するために使える数字は、投票ツイートだけではありません。
投票数可視化の試み
一人あたりの投票数が分厚い陣営を推し量る等の目的で、課金票15000票(モバマス、デレステのそれぞれで第2弾まであり、最大60000票)を投票したプロデューサーが自陣営に何人いたかをカウントしたところは、それなりにいたでしょう。黒川千秋さんの陣営はそこからさらに一歩進めて、各プロデューサーに千秋さんへの投票数を申告してもらって集計することにより、彼女への投票の一部を可視化する「96川1000秋プロジェクト」を実行していました。
#96川1000秋プロジェクト経過報告
— ターキーP🔝 (@Turkey_P) May 16, 2020
本プロジェクトで集計した今回の黒川千秋の投票数は、
総選挙 318879 票(達成率332.2%)
ボイス 1334014 票(達成率1389.6%)
でした。
たくさんのご協力ありがとうございました!#96川1000秋プロジェクト#黒真珠の旗を掲げよ pic.twitter.com/XeWx1R0Rhs
自分は千秋さんに投票してこのプロジェクトに参加するだけでなく、企画者側からもう少し詳しい情報を入手しており、この数字の裏側にある内容も多少は知っていました。そのデータはあえて前回の分析記事では用いませんでしたが*1、自分は前回記事を書きながら、自らに課したその縛りを歯がゆく、書いた記事を薄っぺらく、感じていました。
ツイッターの外にあるもの
ツイッター以外の世界を見ることも、忘れてはならないでしょう。
例えば、ニコニコ動画。もしぼくが、「たべるんごのうた」ブームの存在を知らずに前回記事のようなツイ集計ベースの分析と今回のような辻野あかりさんの勝因推測を書き、それを「たべるんご」を知るもう一人のぼくが読んだとしたら、その分析は表面的すぎるように感じたと思います。
例えば、pixiv。もともと砂塚あきらさんはファンアートが盛んなことで定評があり、以下のサイトを見れば分かりますが、今回のVA参加者の中ではトップの累計投稿画像数(2020/05/29時点で2959件)を誇ります。登場から1年半足らずの新アイドルであることを考えると、1日あたりの投稿件数では圧倒的と言えるでしょう。少なくともpixiv絵師の世界においては、あきらさんの地力はVAに参加する他アイドルを上回っていたと思います。あきらさんの勝因の一つと推定した「数の力」は、あかりさんのブームに引っ張られたという推測だけでなく、こういった地盤も加味して評価すると見方が変わると思います。
www.shuukei.info例えば、discord。シンデレラガールズのアイドル別SNSとしてdiscordの果たす役割は大きく、上記「96川1000秋プロジェクト」をぼくが知ったのもdiscord千秋サーバー「黒曜の囁き亭」でのことでした。
桐生つかささんのdiscord管理人である方がまとめた以下の記事は、具体性に富み、つかささんの勝因を説明するという点では、ツイートの数字を追ったぼくの記事よりも、ずっと説得力があると思います。
yuki76kiriya.hatenablog.jpつかささんの記事で、
他のアイドルと比べ優位な点に関しては、投票先の集計データにあるように総選挙上位陣とのつながりを意識した行動をすべきとの声からつかさとのユニットを組んでいるアイドルに投票し、ユニット曲実装を目標にボイス投票を促した。
とある部分が、ツイ集計からぼくが(結果発表後に)推測した「つかささんの陣営はVAに注力した」という部分に合致し、具体策としては、明示的な票交換よりも、つかささんとのユニットを組んでいる総選挙上位アイドル(北条加蓮さん、佐久間まゆさんなど)に投票して、ユニット曲実装を目標にボイス投票を促したということが分かります。
そう言われてツイ集計を見直すと確かに、以下のデータは存在するのです。
- 北条加蓮さんに総選挙で投票ツイートした3398アカウントのうち、VAで桐生つかささんに投票したのは476アカウント(14.0%、工藤忍さんに次いで2位)
- 佐久間まゆさんに総選挙で投票ツイートした1986アカウントのうち、VAで桐生つかささんに投票したのは283アカウント(14.2%、1位)
このように、内情を知ったうえで数字を見ることで、見えてくるものがあると実感しました。
<追記> 以下のツイートも参考になります。
桐生つかさとPたちの戦略についての発言まとめ(1/2)#CG総選挙ドラフト生
— あくにん (@akuniso315) May 22, 2020
今回のつかさ社長とP達の総選挙についての考察部分が聞いていてとても楽しかったので、個人的にメモにまとめました。(1時間25分頃〜40分ごろまで)
発言意訳している部分等もありますので、それでもよければご覧ください。 pic.twitter.com/KzRVEaeFNu
辻野あきらさん、砂塚あきらさんについても、たべるんごブームだけで勝ったわけではなく、また、数字を追うだけでは見えない内情があるのだと思います。
辻野Pと砂塚P、楽屋花で繋がりが出来た事もあって見てたけどP歴浅いのに歴史から学んでて、嫁プロ設立discordワンドロP同士連携強化とか基礎的な事をこの一年的確にやってて凄かったんだよ。
— せた🚀🐰🍎🦈💊 (@seta_anzuP) May 21, 2020
風が吹いたのは確かだけど、好機をモノにする地盤は間違いなくPさんたちの地道な努力が築いたものだと思う。
このような証言*2もあります。
Facebook、Instagram、Youtubeなど、ツイッター以外で総選挙やVAに関係ありそうな世界は他にも色々あると思います。
ツイ集計のようなマクロな数字の裏側には、一人ひとりのアイドルの陣営、一人ひとりのプロデューサーの考えがあります。総選挙やVAといったアイマスの投票企画を分析したいならば、そういったミクロな要素を取材することも大切なのでしょう。
むしろぼくの記事は、それを補足するものとして位置づけると、価値を見いだせるかもしれません。つかささんの記事のような、各陣営の振り返り(ぼくも別の場所でそういった記事を書いたことがあります)をメインに読み、本記事やツイ集計データでその裏付けを取るという読み方です。
総選挙とツイ集計について(余談)
前の記事とこの記事ではVAを主に取り扱い、シンデレラガール総選挙のツイ集計分析はほとんど行いませんでした。
総選挙のツイ集計から実順位を推定する方法の手がかりについて一つだけ、見つけたことがあるので述べます。
総選挙中にデレステでフェス限・限定SSR化されたアイドルは、ツイ集計(アカウント数ベース)より実順位がかなり上に出たようです。彼女たちの担当Pは総選挙応援セットを買ってガシャを回し、投票したため、上記bの値(一人あたりの投票数)が大きくなったのでしょう。デレステはアクティブプレイヤーが多く、今回は課金票の比重が高いため、このようにはっきり順位に出たのだと思います。
まとめ
見かけ上、今回に限っては、VAに注力したアイドルの陣営(VAに比べ総選挙への投票率が低い陣営)が勝ちましたが、次回以降もその傾向が続くかは分かりません。
そもそも来年VAがあるかどうか分かりません。仮にあったとしても、レギュレーションや投票券の配布バランス等が異なるかもしれません。形式が同じだったとしても、その際有力候補と目されるのは誰でしょうか。今回のVAでは4位以下は公表されませんでした。すると、工藤忍さんや浅利七海さんという、今回「総選挙側で」ランクインしたアイドルが、次回有力視されるかもしれません。2018年冬~2019年春に登場した「新アイドル」7人全員のボイス実装が決定したことを受け、この先一年間で、さらなる新アイドルが投入される可能性もあると、個人的には思います。
総選挙やVAの分析は一筋縄ではいかず、ツイ集計やマクロな数字だけを追っていたのでは限界があると思いました。一人ひとりのアイドルの陣営やプロデューサーの考えの傾向を知ってミクロな分析をし、マクロな数字でそれを裏付ける、そういったやり方が正道なのかなと感じました。
お読みいただき、ありがとうございました。